第2回:CentOS環境へのJMeterインストールと実行コマンドでは、負荷テストの実施に必要なCUIコマンドについて解説しました。基本的なコマンドについて習得できたので、負荷テストを行っていきましょう。
新規に負荷テストを行う際にまず実施するのが基礎データの取得です。基礎データについての詳細情報は、基礎データの取得へ記載していますので、そちらをご確認ください。
簡単に説明すると、基礎データとは、負荷テストシナリオに組み込まれているアクセスの、最短平均応答時間です。負荷をかけた時に、ここで取得したデータよりも高速、または極端に遅くなっているときは、正常に負荷テストが実施できていない可能性があります。また、比較するさいの基本となるデータになるので、最初に基礎データの取得を行っていきましょう。
この記事では、具体的な基礎データの取得方法について解説していきます。
ブラウザを使ってデータ取得
ブラウザからシナリオと同様の遷移を行い、応答速度を把握します。応答速度の計測は、開発者ツールを使って行います。開発者ツールはブラウザを開き「F12」ボタンで起動することが可能です。
「Network」のタブから、該当遷移の「type:document」のリクエストを探し、「Time」の数値を調べます。
計測した時間は、のちほどJMeterで取得した時間と比較することになるので、表などにまとめておきます。
遷移 | 手動(ms) | JMeter(ms) |
---|---|---|
10_トップ画面 | 259 | |
20_ログイン画面 | 235 | |
30_ログイン実施-0 | 173 | |
30_ログイン実施-01 | 254 |
JMeterを使ってデータ取得
ブラウザからのアクセスが終了したら、JMeterから最小負荷でアクセスし、時間の計測を行います。テスト実行はCUIで行い、結果ファイルを統計レポートへ出力して時間の確認を行います。
基礎データ取得用設定
まずは、JMeter側の設定を最少負荷の基礎データ取得用の値に変更します。主な変更箇所は表の通りです。
設定項目 | 値 | 備考 |
---|---|---|
スレッド数 | 1 | 他の影響を最小限にするために1 |
RampUp | 0 | スレッド数が1なのでいくつでも可 |
ループ回数 | 10 | 揺らぎを減らすために10回程度を設定 |
タイマ | 1秒固定 | 条件を一定にするため固定値を設定 |
基礎データ取得
設定が完了したら、実行してみます。大きな負荷をかけるわけではないですが、CUIから実施していきます。
${JMETERインストール}/bin/jmeter -n -t シナリオファイル名 -l 結果ファイル名 -Jthread=1 -Jrampup=0 -Jloop=10
実行が完了したら、結果ファイルをGUIの「統計レポート」リスナーへ出力して結果の確認を行います。
取得した基礎データの確認
結果の確認は次の2点について行います。
- エラーなく終了していること
- 手動で取った応答速度と比較し、大きく差がないこと
上記2つが満たされていれば、基礎データの取得ができたことになります。
統計レポートを見ると、「10_トップ画面」の最大値が2秒以上と大きく時間がかかっています。95%Lineと99%Lineを比較すると、差が非常に大きく、2秒以上かかったのが例外的なものだとわかります。そのため、今回は95%Lineのデータをもとに比較します。
遷移 | 手動(ms) | JMeter(ms) |
---|---|---|
10_トップ画面 | 259 | 262 |
20_ログイン画面 | 235 | 232 |
30_ログイン実施-0 | 173 | 170 |
30_ログイン実施-01 | 254 | 241 |
手動で計測した応答速度と比較しても大きな差がないことがわかりました。基礎データの取得が完了です。ここで取得した平均応答速度が、インフラに負荷が全くかかっていない状態で応答可能な速度となります。
まとめ
この記事では、基礎データの取得方法について紹介しました。手動の遷移と、JMeterでテスト実行したデータを組み合わせることで、より精度の高いデータの取得が可能になります。
応答速度の早い、遅いを判断するための基準になるので、負荷テスト実施の一番初めに取得しておきましょう。
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~ JMeterによる負荷テスト実施入門 ~
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第1回:JMeterによる負荷テスト実施入門
第2回:CentOS環境へのJMeterインストールと実行コマンド
第3回:基礎データの取得方法
第4回:低負荷テストの実施方法 ←次の記事
第5回:限界スループットの確認方法
第6回:チューニング実施と効果測定
第7回:マスタスレーブ構成を用いた負荷テストの行い方
参考サービス紹介:JMeterを使った負荷テストツール